TOKIOの山口達也"離婚"に学ぶ「親子断絶防止法」の課題
TOKIOの山口達也さんは2016年8月に離婚しました。3億5千万円と推定される都内一等地の豪邸は妻子に譲られ、自分はそこから徒歩数分の家賃19万円ほどの賃貸マンションに暮らしているそうです。専業主婦だった妻には蓄えもないことから、母子の生活を様々な面で援助していくというのです。
近くに住むことで、子どもたちをサポートすることも可能になります。離婚後もずっと妻子をサポートしていく。こういった関係はとても理想的ですね。少なくとも、離婚後もコミュニケーションがとれる関係性が維持されれば、多くの人にとって理想的な結婚破綻後の生活じゃないでしょうか。
今、「親子断絶防止法」なるものが国会に提出されようとしています。これは離婚後、子どもの面倒をみている親に、別れた親に子どもを会わせることを義務付ける法律です。共同親権を導入し、子どもの居場所を別れた親にも知らせることも含まれるようです。
山口さんのような関係を実現することはとても素敵なことなのですが、現実には「もう顔も見たくない」状態となってしまった元夫婦の間には、煩わしい義務化でもあります。法律というのは全ての人に適用されることを前提として作られますから、「関係がうまくいっていない家族にとってはどうなのか」ということも念頭において作られなければなりません。
もしこの法律ができてしまったら、子どもの虐待問題やパートナーに対するDV問題はどうなるのでしょうか?これらの問題に対しては、具体的にどうするのかがまったく明らかになっていません。裁判では、虐待・DVを理由に「接近禁止」が出ている状態でも、「とにかく会わせるように」という審判が出ているケースもあります。多くの人が危惧を覚えても仕方ありません。
例えばアメリカでは、子どもに対する社会権としての「子どもの権利」というものが認められておらず、面交は子供の権利ではなく、「非監護親の権利」と考えられています(アメリカとソマリアは「子どもの権利条約」に批准していない世界でたった2つの国です)。欧米ではDVの夫にも面交させなくてはならないという考え方までありますが、さすがに日本では難しいでしょう。
『別れたDV夫に子どもを会わせたくない…』
親権を持つママにはこのような悩みや苦しみもあります。」
例えば元夫が、離婚後にむき出しの包丁や割れた食器、切り刻まれた家族写真などの入った荷物を送りつけてくるような人だったらどうでしょう?それでも、裁判では「子どもの面会交流が何より大切」と元妻の気持ちは後回しにされてしまうケースも珍しくないのです。
ある方はこうおっしゃっています。
「私にとっての面会交流は、形を変えたDVの継続です。相変わらず元夫に振り回され、『子どもとの安全な生活を奪われないか』といつも怯えています。」
「親子断絶防止法」が成立することによって、「むしろ会いたくない」とする元妻や子供の意思を無視していいものでしょうか?無理やり葛藤のある夫婦関係に投げ込まれる子供たちは、果たして幸せになれるのでしょうか?
養育費の支払いを義務化するシステム作りが先!
現状、養育費を別れた夫に支払わせることが徹底されていません。いくら裁判で「月○○円を養育費として支払うように」と言われても、元夫がそれを実行しなければ意味がないのです。
この一番大切な問題を後回しにして、「親子断絶防止法」だけを成立させてしまっては、母子の基本的人権そのものが脅かされてしまうことにもなりかねません。
養育費やDVなどの様々な問題を考慮することなく、この法案が通ってしまえばどういう状態になってしまうのか。考えるだけで恐ろしくなってしまいます。弱者が苦しみ続けなければならない...そんなことを可能にしてしまう法案は、もう一度しっかり見直されなければならないのではないでしょうか。
国や自治体としての役割、法律の意味というものをきちんと考えていく必要があるはずなのです。山口さんたちの関係は単独親権で、面会交流の義務付けがなくても可能になっています。しかし、世の中はそんな円満離婚カップルばかりではありません。真の意味で有意義な面会交流ができるようなサポートを、国には望みたいと思います。