有名人と社会問題のお話 〜芸能ニュースから学ぶこと

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布施博の母親介護で考える成年後見人制度

俳優、布施博さんの母親は認知症を患い、現在は自宅で介護を受けています。狭心症で通院していた彼女は、自宅への帰り道が分からなくなるなど物忘れがひどくなり、アルツハイマー認知症と診断されたのです。鍋を焦がしたり、洗濯機に大量の洗剤を入れたり、毎日服用する薬を適切に飲めなくなったり...

布施さんは、酒乱だった父のため苦労続きだった母のため、週2回のデイサービス以外は自宅での介護を続けるといいます。仕事に影響があるときもあるが「ひとりにさせておけない」「できる限り母と接していたい」と考えているのです。

本人だけでなく家族の介護疲れも社会問題となっていますが、イライラしても仕方がありません。悩んでも前向きにやっていかないと何の解決にもならないのです。


成年後見制度を考える》

布施さんのように、家族が介護を担っていくことが一番自然であり理想的なのですが、現代社会においてはそういうわけにもいきません。

そこで、特別養護老人ホームなどの高齢者施設に入ってもらうことも選択肢の一つ。そしてもう一つ、「成年後見制度」というものがあります。

成年後見制度」は、認知症などで判断能力が不十分な人の財産管理や法律行為を後見人が代行する制度。利用促進を図る法律が2016年4月に成立しました。民法も改正され、利用者の郵便物の開封や死後の手続き代行を認めるなど後見人の権限が拡大しました。

認知症や一人暮らしの高齢者が増える中、何らかの支援体制の充実は必要です。ただ、この制度自体は日本も批准している障害者権利条約の「障害者の法の下の平等」に反しているとの指摘もあり、後見人の権利拡大には批判の声もあがっています。

闇雲に制度浸透を焦らず、まずは「利用者本人の意思の尊重」や「自己決定権」を徹底するための仕組み作りを優先して行う必要があるのではないでしょうか。

本末転倒になってはいけません!

高齢社会を支える両輪として、介護保険制度とともに2000年に導入されてから16年。認知症患者は400万人を超えていますが、制度利用者は20万人弱...



《利用低迷の現実》

制度の周知不足に加え、後見の担い手不足が挙げられます。以前は家族や親族が後見人を務めることが多かったのですが、近年は司法書士や弁護士ら専門職が増え、全体の7割を占めるまでになりました。ただ、今後益々増えるであろう利用者を専門家だけで担当するのは限界があります。


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《市民後見人》

法律の専門家のみならず、一般の市民でも成年後見人になれる「市民後見人」というものが存在することをご存知の方はいったいどれくらいいるのでしょうか?

NPO法人や行政機関、大学などが養成した市民ボランティアが認知症高齢者や重度の障害者らを支援してきた実績も報告されています。しかしながら、後見業務に関わる交通費をボランティアが自費で負担しなければならないようでは担い手が増えるはずもありません。必要経費の手当てや専門職による相談支援などバックアップ態勢が不可欠です。



《信頼性を高める》

人材を増やす上で質を高めていくことも重要です。利用者の意思確認という難しい業務に加え、財産の着服といった後見人による不正が相次ぎ発覚しています。弁護士などの不当な高額報酬も問題となっています。

最高裁の調査では、2015年度の後見人の不正は500件超 (被害総額約30億円)。発覚していない不正はそれ以上あるとも言われています。制度の根幹を揺るがす事態で、これでは信頼も何もあったものではありません。早急な対策が求められます。


《制度の欠点》

不正が横行しやすいことの他にも、成年後見人制度には「後見」を受けると専門職資格を失ったり会社役員の地位を失ったりと「欠格条項」があり、廃止を求める声が強くあがっています。利用者の意思が侵されては制度は有害でしかありません。


《まとめ》

私自身も数年前に東京大学で市民後見人養成講座を受講し資格を取得しましたが、「成年後見人」の必要性を強く感じると同時に不備の多さにも気付かされました。このままでは悪の蔓延る温床になるだけ!

課題は山積みですが、皆が安心して暮らせるよう、再度抜本的な制度の見直しを徹底していただきたい。布施さんのように家族が後見人として行動できる人はけっして多くはないのです。国や地域社会が一致団結して社会保障福祉を総合的に担っていかなければならない時代に突入しているのです。

皆さんも、家族の介護問題を一度真剣に考えてみてください。私も布施さんのように「ひとりにさせておけない」「できる限り母と接していたい」と考え、数年前に東京を離れ田舎の実家暮らしに転じた者の一人です。

親がいてこその自分!
恩を仇で返すわけにはいかない。

「生きてて良かった。いい人生だった。」と幸せを感じながら人生に幕を降ろしてもらえるよう、日々精進しながら暮らす日々も悪くはありませんよ。

何より、都会の慌しい生活の中で「何のために生きているのか」を見失いかけていた自分が嘘のように、今は「生きるということ」をしっかりと見つめ直す時間が持てていることを母に感謝しています。

認知症になっても、寝たきりになっても、私がいるから大丈夫だよ!