「子ナシ孫ナシ高齢者」の溢れる社会を生きるということ
女優の山口智子さんは「子どもを持たないことは自らの選択であり後悔はない」と発言、また、NHKアナウンサーの小野文恵さんは「子どもを産めなかった我々は『良い捨て石』になろう」と発言しました。アラフィフの女性たちが「子どもを産む産まない」についてこのように語るようになってきたことに対し、世間では賛否両論の議論が繰り広げられています。「本人の選択を尊重すべきだ!」という意見が多いものの、「子孫を絶やさないことは人類の義務だ!」などの否定的な声もあります。
子ナシ族
子どものいない「子ナシ族」は、今や珍しい存在ではなくなりました。生涯を未婚で過ごす男性は10人に2人、女性は10人に1人。さらに子どものいない既婚者を合わせると、その数けっして少なくはありません。さらに今後、大量の「子ナシ孫ナシ高齢者」が増えていくのは確実です。これからは、出生率と同じように「生涯未産率」が注目されていくのではないでしょうか。
親の看取りは子の役目
私は「人類の歴史」を考える時によく思うことがあります。それは、子は親を看取るために存在しているということ。そして、看取りを終えたらそれで終わりではなく、葬儀や相続にまつわる作業、遺品や家の片づけなど、やるべきことが山積みなのです。しかし、子供がいない人生を送っている人にとっては「で、私の時は誰がやるの?」となるわけです。「おひとりさまの最期」の著者である上野千鶴子さんも、「これからはどうやって自分のお棺の蓋を閉めるか、その仕組み作りを構築する必要がある」とおっしゃっています。今後は「子ナシ孫ナシ高齢者」が増えていくわけですから、独身の叔父・叔母を持つ甥(おい)・姪たちの負担が社会問題になってくるでしょう。そう言ったことも社会全体で考えていかなければなりません。
周囲に迷惑をかけない死に方
子ナシ族が周囲に迷惑をかけず安心して死んでいけるようなサービスには需要があるでしょう。ある意味、ビジネスチャンスとも言えるでしょう。
子持ちと独身、それぞれの人生
子持ち人生と独身人生では遊び方や暮らし方が大きく異なります。双方にとって、これまで仲の良かった友人と疎遠になる寂しさを感じたこともあるでしょう。ひと段落してまた会うようになる場合だってあるでしょう。そして、親の看取りや自分の老後について真剣に考え始める40代以降は、再び「子ども」という存在について向き合う時期なのかも知れません。
40代子供なし人生
私も「40代子どもなし」のひとりですが、SNSで同世代の子どもネタや写真入り年賀状を見ると、ちょっと落ち込んでしまうこともあります。ただし、SNSにアップされるのは基本的に“光”の部分であり、「不登校」「ひきこもり」「不良」「非行」「家庭内暴力」など、問題も多々あります。つまりは、子供がいてもいなくても、幸せな人生もあれば不幸な人生もあるわけです。
過去に一度だけ、子どもがいないことに対して「これでいいのかな」と深く考えたことがありました。でもそれは、自分自身のためではなく、「親に孫の顔を見せたい」というものでした。そもそも私は、「わがまま & 叫ぶ」 子どもが大の苦手なので、そんな気持ちも一瞬でおさまり、今に至っています。結局それは、生物として種を残すための焦りだったのかも知れませんね。私は、海外を一人旅することが大好きですし、日常生活において誰かに邪魔されることは大嫌いです。何かを育てるということは向いていません。一人の時間がとっても大事です。そう考えると、「子どもがいなくてよかった」と心から思えるのです。自分に子育ては不向きだと受け止めた上での結論なのです。
成長の形はいろいろ
よく「子どもが大人を成長させてくれる」「子育てを通して人は成長するんだ」などと言われたりしますが、そのことは正解であり不正解でもあると思うのです。確かに、子育てを通して成長していっている大人たちもいますが、一方でダメ親もたくさんいることは周知の事実です。マザーテレサさんや黒柳徹子さんのように子どもがいないことで社会のために大きく貢献する人たちだってたくさんいるじゃありませんか。
人の考え方や価値観は多岐に渡ります。「子どもを産まない」という選択を「単なるわがまま」と捉えたり、「子育て経験のない人は未熟」という価値観は明らかに間違っています。そんな考え方は差別の根源ともなり得るもので不健全ですらあります。
仮に、心ない人から「未熟だ」「不完全だ」などと罵られても、別にいいじゃないですか。そもそも、子どもがいる人が皆、人格的に素晴らしいかといえばそんなことはないですよね。子ナシ族の皆さん!思いきり開き直ってあなたらしい人生を過ごしていってくださいね。
<産後うつによる妊産婦自殺>
過去10年間、うつ病により自殺で亡くなった妊産婦が東京23区で計63人に上ることが東京都監察医務院などの調査で分かりました。妊産婦の自殺数についての本格的な調査結果が明らかになるのは初めて。「産後うつ」が原因の死亡は、「出血など」による妊産婦死亡率の約2倍。。。妊娠・出産期の死因として自殺が最も多いことに対し、今後、メンタルケアの充実を急がねばなりません。
妊産婦の精神面をチェックし、産後うつになる危険性の高い女性を早期に見つける問診などの具体策を徹底させていかなくてはなりませんね。自殺リスクの高い女性を医療と行政が連携してフォローする必要があると思うのです。だって、精神科と産婦人科が連携し適切なフォローがあれば、救えた命があったはずなのですから。
産後うつ傾向を示す夫たち
近年は、「子育て」と「仕事」の両立という重圧から、妻だけでなく夫もうつ病になりやすいようです。うつ傾向の夫たちは、子どもへの虐待を繰り返し、家庭はボロボロなんてことも...
女性の「産後うつ病」とともに、夫の「産後うつ病」にも気を配らなくてはなりません!
まとめ
「子どもがいるとしんどい」
「私には子どもがいなくてよかった」
単なる慰めとも取れるこの言葉に励まされつつ、まずは親の看取り問題のみを考えている私。しかし数十年後の、自身の終活にスポットを当ててみると、看取りは親族ではなく行政か医療機関に任せるしかありません。それもまた人生です。
「老衰で死ぬなら子供や孫たちに看取って欲しい」
でも、ある日突然震災や交通事故で亡くなるかもしれません。ガンなどの大病で一定期間苦しみ抜いて死んでいくのかもしれません。死ぬ間際に「自分が死んだらこの人(大切な家族)は大丈夫だろうか?」と憂いを残すくらいなら、ハナから「死ぬ時は一人で!」と覚悟を決めておいたほうが気は楽です。
織田信長ではありませんが「人生は50年!」と考えてみませんか?それ以上の人生はおまけです。「社会に役立つ」に徹底して生きましょう。欲や執着は捨て去るのです。
そう考えると、「子ナシ孫ナシ」の人生にはすごく意味があると思いませんか。